Honki岩白

2014.10.20政策

高齢福祉施設における安全管理

特養で転倒後に死亡した老人について、家族が特養を訴え480万円の損害賠償請求を認める判決がなされました。世間ではほぼ議論になっていないでしょうが、私は高齢福祉施設での安全管理に、今後間違いなく暗雲が立ち込めたことになる判例になると危惧しています。。

特養をはじめとする、高齢福祉施設では、しょっちゅう転倒事故が起きています。残念なことではありますが、骨折が原因となって1か月以内に死亡される例も、全国的にはかなり多いはずです。施設における転倒事故は、それが故意または故意に近いくらいの重大な過失がない限り、通常は施設管理の責任が問われることはないハズです。それくらい老人の転倒事故とは、起こりやすいものなんだと思います。

今回の件の例の場合、「歩行車を使って個室に向かう途中、後ろ向きに転倒」とあるので、おそらくはありふれた事故だったのでしょう。しかもショートステイ利用者で96歳。

通常、こうしたケースが裁判に持ち込まれることはないと考えますが、施設側の対応が悪かったのか、ショートステイ利用者で施設と家族のコミュニケーションが悪かったかのでしょうか、とにかく訴訟になってしまいました。そうしたら、介護の現場には恐らく詳しくはないであろう裁判官が、施設側の過失責任を認めてしまった。

(一審で終わったこともビックリですが)この判決が確定した意味合いは、介護業界にとって本当に大きいものです。こうした日常的に発生し得る事故が、約500万円の損害賠償対象となるという判例(前例)となってしまいました。デキル弁護士なら、施設内の転倒事故を詳細に調査し、訴訟を持ちかけようとするかもしれません。商売であるなら、それは当然でもあります。

結果として、老人を預かる施設を訴える訴訟が多発していくのではないでしょうか。

そして一番心配するところは、施設としては、もはや老人ができるだけ出歩かないように、リハも制限し、特養であれば、歩ける老人もできるだけ歩かせないようにすることが、高齢施設で定着化していくことを私は一番危惧しています。薬漬けでできるだけベッドに寝かせておくようにするかもしれない。

日本という国は、様々な事故の判決によって、あらゆる業界を委縮させてきた経緯があります。これから益々多様化する高齢社会において、介護業界の現場に関わる全ての方々にとって、悪い影響とならなければと心配しています。

  • 国連アジア太平洋本部の広島市誘致